Graded Direct Methodで英語の授業が変わる – 英語脳を育てる理論と実践 – この一冊でGDMとその授業の作り方がわかる Graded Direct Methodで英語の授業が変わる – 英語脳を育てる理論と実践 – この一冊でGDMとその授業の作り方がわかる

公立中学校におけるGDM活用の効果 -外部テストの結果から-

松浦克己

実践校と時期

愛知県小牧市立小牧西中学校で2002年から2014年までGDMを活用した英語授業を実践

GDMを活用した授業実践の概要

(1) 1年

  • EP1の36ページまでを教科書と平行して1学期に指導
  • EP1の51ページまでで教科書に出てくることを優先に2学期に指導

※ 詳しくはGDMのホームページ「実践報告集:Year Books」を参照

(2) 2年、3年

  • 教科書のカリキュラムにあわせ新出文法事項はGDMのライブを活用して導入
  • 必要に応じて、絵やワークシートでのまとめ

実施テスト

図書文化社 標準学力検査(NRT)

実施時期

  • 年度初め(2年、3年4月初め)

テストの結果から

(1) 実践した13年間における各学年の平均偏差値は57~61

(2) 実践の中で、平成20年度に入学した学年の2・3年での 聞く、話す、読む、書く、の4技能における正答率を数字とグラフで示す。

<表1: 2年 4月 (平成21年)>
分野 全国 小牧西中
聞く 81% 91% +10
話す 62% 82% +20
読む 59% 72% +13
書く 47% 75% +28
<表1: 3年 4月 (平成22年)>
分野 全国 小牧西中
聞く 63% 82% +19
話す 62% 87% +25
読む 67% 84% +17
書く 53% 84% +31
表1: 2年 4月 (平成21年)のグラフ

表1: 3年 4月 (平成22年)のグラフ

<図1>
  • GDMの授業 < ライブ ⇒ 絵 ⇒ 文字 ⇒ ワークシート > により、4技能すべてに効果が表れている。
  • GDMの活用によって、入門期にしっかりとした英語の基礎・基本がつくため、2年から3年にかけて伸びている。
  • ライブでの聞く、話す活動により、ワードオーダーの基本が定着し、それが「書く」の高得点につながっていると考えられる。

(3) 各問題の正答率から分かること

問題数は70数問あり、それぞれに全国平均正答率が分かっている。この正答率をもとに問題を難易度別に分け、それを小牧西中学校の正答率と比べたものを数字とグラフで示す。

<表2: 2年 4月 (平成21年)>
全国平均正答率% 全国 小牧西中
90%以上 94% 98% +4
80〜89% 85% 93% +8
70〜79% 76% 92% +16
60〜69% 63% 80% +17
50〜59% 55% 76% +21
40〜49% 44% 71% +27
39%以下 25% 50% +25
<表2: 3年 4月 (平成22年)>
全国平均正答率% 全国 小牧西中
90%以上 92% 97% +5
80〜89% 82% 95% +13
70〜79% 74% 90% +16
60〜69% 65% 85% +20
50〜59% 56% 83% +27
40〜49% 45% 78% +33
39%以下 30% 63% +33
表2: 2年 4月 (平成21年)のグラフ
表2: 3年 4月 (平成22年)のグラフ
<図2>
  • 全国正答率90%以上、80〜89%、70〜79%の3つの段階において、実施校では90%を超えている。GDM教授法では、説明をしないのでスローラーナーズには分かりづらいとよく誤解されるが、この3つの段階の結果からスローラーナーズにも大きな効果があることが分かる。
  • 教科書とは異なったGDMの指導順序をうまく取り入れることが、このような効果を出している大きな理由の一つに挙げられる。その主なものは、①be動詞 ②人称代名詞 ③時制 などである。
    ※ 詳しくはGDMのホームページ「実践報告集:Year Books」を参照
    Year Books NO.69「代名詞の指導順序の重要性 ~GDMと教科書をくらべて~」(PDF, 5.6MB)
  • 日本語訳や説明を用いずにSEN-SITSを使って教えるGDMの特徴、すなわち学習者から見ると、目の前の具体的なものやことを英語で表していく過程でルールを自分で見つけ出すという学習方法が、文法用語を(もちろん日本語による)使った説明を聞き、次にドリル練習をしてといった従来の方法に対して大きな効果があることが分かる。